セキスイかわらUが塗装できない理由とリフォーム方法
ご自宅の屋根がどんな屋根材を使用しているか、皆さんは把握されていますか?
「ハウスメーカーから塗装は不要と聞いていたのに
いざ、外壁の塗装のお見積りを依頼したら屋根の塗装も必要だった・・」
そんなご家庭も少なくありません。
さらには塗装工事をしようとお見積りをとったら塗装が出来ない屋根だった、なんてこともあります。
そこで、今回は実は塗装ができない「セキスイかわらU(U瓦)」について、お伝えしていきます。
「セキスイかわらU」は、1970年から40年以上にわたり、
積水屋根システム株式会社(旧セキスイルーフテック)によって製造販売されてきた屋根材です。
「セキスイ」というブランド力と、瓦の形状でありながら軽く、台風や地震に強いという特徴を持ち、
カバー工法が可能というメンテナンス面から、全国に50万棟もの住宅に採用された屋根材でもあります。
しかし、販売当初の1975年から1990年の15年間の「セキスイかわらU」には、
約10~15%のアスベストが含まれており、アスベストの使用に対する規制が段階的に厳しくなったことを受け、
1990年8月にノンアスベストの「セキスイかわらU」を販売しました。
ところが、セキスイにはノンアスベストの屋根材の販売実績はなく、
現場においても実績のない材質を取り扱うことになります。
セキスイの思惑とは異なり、ノンアスベストの「セキスイかわらU」にはアスベストのような強い粘着性がなかったため、
1991年以降、屋根表面の塗装が剥離、屋根材にヒビや割れが発生しクレームが相次ぐことになりました。
▼表面雄塗膜が剥離した様子
なぜ、セキスイかわらUは塗装できないと断言してしまうのか。
塗装をする時、表面の汚れを落とす高圧洗浄から始まります。
この高圧洗浄にセキスイかわらUの強度は耐えられないのです。
専門業者の使用する高圧洗浄機は、一般家庭で使用する高圧洗浄と水圧が異なり、とても水圧の高いものを使用しています。
細心の注意を払って高圧洗浄を行っても、
すでに剥離を起こしている屋根材の表面の塗膜面がさらに剥がれてしまい、
基材がむき出しになってしまいます。
むき出しの基材そのものに塗装をしても、塗料に備わっている本来の耐久性が発揮できなくなります。
ですから、塗装はできないとお伝えしています。
また塗膜の剥離に加え、屋根材そのもの強度不足で、メンテナンスで屋根の上を歩くだけで、
パキパキと簡単に割れてしまうほどもろい状態であることも理由の一つです。
塗装のために何度も屋根の上を歩けば、さらに割れた屋根の数を増やしてしまうことになります。
ここまで読み進めていただいてお分かりの通り、
セキスイかわらUにはアスベストが含まれた屋根材とノンアスベストの屋根材と混在しています。
ご自宅を新築した時の図面や仕様書があり、屋根材にセキスイかわらUが使われていた場合は、
建てた年数で確認することができます。
●1970年から1990年8月までの間に完工したのであれば、アスベストを含む屋根材です。
●1990年8月以降の着工だった場合は、ノンアスベスト屋根材が使われている可能性があります。
●1990年8月以降の完工の場合は、ノンアスベストへと切替をしていた時期に当たりますので、屋根材を見て確認する必要があります。
屋根材の見分け方法としましては、施工時期や棟のロットナンバー、
屋根材の割れや塗膜の剥がれ、白い基材の露出、屋根材表面の細かい網目などありますが、
いずれも専門業者に診てもらうのが一番確実だと言えます。
アスベストを含むか・含まないかでメンテナンスの方法も変わってきます。
アスベスト含有の屋根材の場合は、強度がありますので塗装で表面を保護していきます。
屋根材に劣化が見られる場合や、このまま使い続けることに抵抗があるとお考えの方には、
葺き替えやカバー工事をご提案します。
しかし、撤去・処分の際アスベストを飛散させてはいけないため、通常よりコストが高くなってしまいます。
ノンアスベストの屋根材の場合は、基本的に葺き替えをご提案しています。
どうしても費用を抑えるため、塗装で何とかしたいとお考えの方もいらっしゃると思います。
実際、塗装を行ったとしても、すぐに剥がれてしまったり、塗装中に屋根の上で移動するたびに屋根を踏み割ってしまいます。
補修しながら塗装を行うにしても、範囲が多すぎて補修が追い付かなくなってしまいますので
おすすめしません。
また、塗料メーカーである日本ペイントもセキスイかわらUへの塗装を不可と判断している点も含めましても
葺き替えをご検討ください。
有機繊維強化セメント瓦として、アスベストからビニロンに変更して粘性が無くなった分脆くなってしまったセキスイかわらUですが、積水屋根システム株式会社(旧セキスイルーフテック)は、セキスイかわらUの販売を2007年に終了し、
屋根瓦の販売自体も2013年に撤退しています。
現在、積水屋根システム株式会社ではアフターメンテナンスのみ行っていますが、
この経験が活かされ、クボタと松下電工の合併会社、KMEW(ケイミュー)からROOGA(ルーガ)が生まれました。
ルーガは地震による強い衝撃や荷重がかかった時には、素材の粘り強さで衝撃を吸収し割れを抑える、
耐衝撃性(柔軟性)を持たせた屋根材です。
松下電工のレサスやシルバスも、セキスイかわらUと同時期に同様の問題を抱えた屋根材でしたが、
失陥を知り改良を加え、安全な屋根材へと進化しています。
屋根材も日々進化しています。
今のお家の屋根の状態や今後のメンテナンスを踏まえて、何がお家のために良いのかを判断していく必要があります。